不動産賃貸業で実施可能な節税対策を教えてください。
早期償却・早期費用化を図ること、税務上メリットのある制度を活用すること等があります。

 次のような節税対策が考えられます。

⑴ 減価償却資産を細分化し早期償却を図る

 通常、建物の建築費は建物本体だけではなく、建物附属設備・構築物・器具備品等も含まれております。

また木造等の建物附属設備については、減価償却費の計算において建物と一括して建物の耐用年数を適用することができますが、建物以外の資産の耐用年数は建物の耐用年数より短くなることが一般的です。

さらに建物・建物附属設備・構築物以外の資産は減価償却方法に定率法を採用することが可能であるため、減価償却資産を区分し償却費を計上することで早期償却が可能となります。

⑵ 定期的な(こまめに)修繕を行う

 修繕のための支出は必要経費となりますが、その支出は修繕費として支出した年に経費計上される場合と資本的支出として固定資産に計上し減価償却の対象とされる場合に区分されます。

 節税対策として支出した年に全額を修繕費として必要経費として計上するためには、次に掲げる支出である必要があります。

  1. おおむね3年以内の期間を周期として行われる修理・改良などであるとき又は一つの修理・改良などの金額が20万円未満のとき
  2. 一つの修理・改良などの金額のうちに資本的支出か修繕費か明らかでない金額がある場合で、その金額が60万円未満のとき又はその資産の前年末の取得価額のおおむね10%相当額以下であるとき

上記のような修繕を行い早期に費用計上することで節税を図ることができます。

⑶ 配偶者を青色事業専従者にする

 不動産貸付けが事業的規模である場合には、青色事業専従者給与を必要経費に算入することができます。

なお、青色申告には様々な特典がありますので、それらを活用することも節税につながります。

⑷ 小規模企業共済等に加入する

 国の機関である中小機構基盤整備機構が運営する小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員・個人事業主等のための積立て退職金制度です。

月々の掛金は1,000円から70,000円までの間で自由(500円単位)に設定が可能であり、加入後の増額・減額もできます。

なおその掛金は確定申告時に、その全額を課税対象所得から控除(小規模企業共済等掛金控除)することができます。

また共済金は退職・廃業時に受け取ることができ、満期・満額はありません。なお共済金を一括で受け取る場合は退職所得扱い(退職所得控除額が控除されます)となり、また分割受け取りの場合は公的年金等の雑所得扱い(公的年金等控除額が控除されます)となりますので、税務上のメリットを享受できます。

 なお、アパート経営等の事業を兼業している給与所得者(法人または個人事業主と常時雇用関係にある方)は、小規模企業共済に加入できません。

⑸ 賃貸不動産を子(孫)へ譲渡・贈与(相続時精算課税制度の利用)する

 収益性の高い不動産を子(孫)へ譲渡・贈与をし、その収益をその受贈者(子、孫)の所得とすることで所得の分散を図ります。

なお実務において譲渡価額の決定、譲渡所得税・贈与税の検討、諸費用(不動産取得税・登録免許税・登記費用等)の負担等の課題がありますので、税理士にご相談のうえ進められることをお勧め致します(贈与についてはコラム6-1参照)。

⑹ 不動産管理会社の設立(別ページ参照)