不動産所有会社におけるM&A
不動産所有会社においてM&A方式が望ましい理由を教えてください。
M&A方式を採用された方が、解散方式を採用されるよりも税負担が一般的に軽くなります。
⑴ 整理する方法
不動産所有会社を整理する方法には、主に下記の方式があります。
① 解散方式
② 株式売却方式(M&A方式)
⑵ 解散方式
解散方式とは、まず会社が所有不動産を売却し、次に譲渡益が生じる場合には法人税等を納税し、最後に残余財産を株主に分配する方式を言います。この方式の場合には、法人において譲渡益に対する法人税が課税され、かつ株主において残余財産の分配に係るみなし配当に対する所得税等が課税されます。
⑶ 株式売却方式(M&A方式)
株式売却方式(M&A方式)とは、株主が法人の株式を直接売却する方式を言います。この方式の場合には、法人において法人所得は生じず、株主において株式の譲渡益に対する所得税等が課税されます。
⑷ 株式売却方式(M&A方式)が望ましい理由
上記より、解散方式では法人税課税及び所得税課税がなされますが、株式売却方式(M&A方式)では所得税課税のみとなるため、一般的には株式売却方式(M&A方式)の方が解散方式よりも税負担が軽減されます。
(参考)土地の譲渡に類似する株式・出資の譲渡
次のいずれの要件も満たす株式・出資の譲渡については、その株式・出資を短期譲渡所得の対象となる土地建物等と同視し、分離短期譲渡所得の対象となります。なお、課税短期譲渡所得金額に係る所得税率は30%(*)(地方税9%)となります(課税長期譲渡所得金額に係る所得税率は15%(*)(地方税5%))。(*)2013年から2037年までの間、所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が課されます。
① 法人資産及び株式・出資に関する要件
⑴又は⑵の要件を満たす場合における株主・出資の譲渡のうち、下記②に該当するものは分離短期譲渡に該当します。
⑴ 短期保有土地等(*)の時価額の合計額/資産の時価総額≧70%である法人の株式等
(*)短期保有土地等とは、下記の土地等を言います。
・その法人が取得した日の翌日からその株式等を譲渡した日の属する年の1月1日までの所有期間が5年以下である土地等
・その株式等を譲渡した日の属する年にその法人が取得した土地等
⑵ 保有土地等の時価額の合計額/資産の時価総額≧70%である法人の株式等のうち、次の株式等に該当するもの
ⅰ 譲渡した年の1月1日において、その個人がその株式等を取得した日の翌日から引き続き所有していた期間が5年以下である株式等
ⅱ 譲渡した年中に取得した株式等
② 譲渡の態様に関する要件
上記①の要件を満たし、さらに次の⑴から⑶までの全ての要件を満たす場合における株式・出資の譲渡は分離短期譲渡に該当します。
⑴ 持株割合
譲渡した年以前3年内のいずれかの時において、
一定の特殊関係株主等の持株数(出資金額)≧(発行法人の発行済株式総数(出資金額))×30%
であり、かつその株式・出資の譲渡をした者がその一定の特殊関係株主等であること
⑵ 譲渡割合
譲渡した年において、その株主(出資)
を譲渡した者を含む一定の特殊関係株主等 ≧ (発行法人の発行済株式総数(出資金額))×5%
の譲渡した株数(出資金額)
⑶ 譲渡割合
譲渡した年以前3年以内において、その
株主(出資)を譲渡した者を含む一定の特 ≧(発行法人の発行済株式総数(出資金額))×15%
殊関係株主等の譲渡した株数(出資金額)
Point
株式売却方式(M&A方式)による場合でも、実質的に短期保有土地を譲渡したものと変わらない場合には、短期譲渡所得として扱われるので注意しましょう。